兄弟的同性愛事情
…たぶん、ライトはももがこうなった理由を何となく気づいてる。
でもそれは、俺が簡単に聞いていいようなことではない。
そう思った。
だからといって、放っておけない。
ももが俺にしてくれたように、俺も、ももを助けたい。
「ももがなんでお前には心を開いてるのか、俺には疑問でしゃーなかった。…たぶん、直感的にお前がいい奴だって思ったんやろーなー」
「なんだそれ」
思わず笑ってしまった。
俺からしてみれば、ライトのほうがずっといい奴だし。
「ももが男に話しかけるなんて、ホントに奇跡みたいなもんなんだよ!」
「ふーん…」
4月のももを思い出すと…
とてもそんなふうに思えない。
わざわざ花を届けてくれた、親切な女の子って印象だったし
自分から笑顔で話しかけてくれたから、俺も珍しく女の子と普通に接することができるわけで。
ももはなんか、他の子とはちがったんだよな…。
恋とは違うけど。
ライトが言いたかったのは、こーゆうことかな?
うん、それなら俺もそうだからわかる。
「ももは俺にとって特別だから、困ってることがあるなら助けてあげたい。…俺じゃ頼りないけど」
「李桜…」
ライトではない声に驚いて顔を上げると
涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔になったももがいた。
「もも…!」
駆け寄ろうとすると、俺より先にライトがももに駆け寄った。
それに少し驚く暇もなく
ももの肩をつかんでライトは怒鳴るようにももに質問攻めをした。
「何があった?!前みたいなことがあったんやろ?!なぁ!!」
ももの肩がビクリと跳ねる。
図星のサインだと思ったライトは、ももの肩を掴む強さをさらに強める。
それでもももは何も言わずに、ただスカートを握って俯いていた。
「ライトっ、…落ち着いて」
とりあえず、ライトの手を離させる。
いつものライトじゃない、らしくもないライトがいた。
こんなに怒っているライトを見るのは初めてだ。
ももは泣きそうな顔になって、俺の後ろへ隠れた。
それをまた苛立たしそうに見るライト。
ももはすがるように俺のブラウスを掴んでいた。
「…話さないんじゃなくて、話せないんだよ。ライト、悪いけど、ももと二人で話したいから」
何か言いかけたけど、ライトは俺たちに背を向けて歩いていった。
ごめん、ライト。
震えるももの手を掴んで、人が来る心配がない屋上への階段を上がっていった。