兄弟的同性愛事情



それから少しずつ、ゆっくりと話始めた。


「実は私、小此木家に養子としてもらわれたの」


「え…?!」










◇◆◇
~百那side~



小さな庭つきの、小さな赤い屋根の家。


そこが私の最初の家だった。


施設の名前は『ひなたの家』。


美味しい林檎がなる木が立つ、普通の民家の隣にある小規模な施設だった。


「みんなー、ご飯よー!!」


育ててくれたのは、この施設で一人で働く林檎さん。


ここの施設には、林檎さん以外の職員はいない。


子供は10人。


私の2つ上が一人、下には、弟が4人と妹が3人、そして私。


家族のように仲が良く、毎日楽しく過ごしていた。


あのときは養子にいく気なんてどこにもなかった。


林檎さんと一緒に働きたいと思っていた。


林檎さんのことは、みんな「お母さん」と呼んでいた。


私たちの親は林檎さんだった。


このままずっと、みんなと笑っていたい。


七夕の短冊にも、毎年みんなで行く初詣にも


私は同じお願いをした。


当時はまだ5才。


養子のことなんて、正直理解できていなかったと思う。




黙って聞いている李桜を気にしながら、ももは言葉を選ぶようにしながら話を続けた。




私が7才になると、里親候補の大人がぞくぞくとうちに集まってきた。


テレビドラマで私達のような子供の話があったみたいで、その影響が大きかったと思う。


「初めまして、百那ちゃん」


「可愛い子ね」


知らない大人から触られるのが怖くて


それと、周りの環境の急な変化に耐えられなくて


私はひなたの家を飛び出した。


何も持たず、とっさに逃げ出したから裸足で。


夏だったから、アスファルトが熱くて足が痛かったのを覚えている。


何を考えていたのかは覚えていない。


大通りを走り抜けて、角を曲がると


小此木家が見えたんだ。


真っ白い大きな家。


お城みたいって思って、しばらく門の前に立ってじっと見つめていた。


すると、急に意識が遠退いて、私はその場に倒れてしまったんだ。


たぶん、熱中症。


次に目が覚めて見えたのは、真っ白な天井だった。


それと、


「奥様!」


黒と白の服…メイド服を着た若い女の人だった。


起き上がろうとしてもクラクラして起き上がれず、どうしたらいいのか困っていると


「目が覚めてよかったわ…。気分はどう?」


優しく微笑む女の人は私にはお母さん、つまり、林檎さんに見えた。


ううん。そっくりだったんだ。


服装はまるで違うけど、女の人は林檎さんそのものだった。


「おかぁさん、ここ、どこ?あたまいたいよ…」


「…ここは私のお家よ」


「おうち、こんなにおっきくないよ…?みんなはどこ?…こわいひとたち、もういない…?」


「えぇ、いないわ…」


落ち着かせるように、女の人は私を撫でてくれた。




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