White X'mas
私は嫌いな食べ物を飲み込むような気持ちで、どうにか最後の一言を口にした。
「私には……見えないから」
一拍おいて、男の人は言った。
「心配そうに見えます」
「心配?」
「はい」
少しだけ言いよどむような気配。
「多分……」
そして、ピアニッシモの声音で言った。
「あなたが悲しそうな目をしているから」
「えっ……」
……………私?………私が?!
絶句している私の右手首が、不意に誰かに掴まれる。
普通なら身をすくませるところだけど、その優しい触れ方に私はされるがままに手を預ける。
すると、ふわり、と、ひときわ強く香った果物のような香り。
「メリークリスマス」