White X'mas
「美味しかったぁ~」
「そうだな」
「フルコースなんて食べたの初めてだよ~。ありがとう」
「まあ、クリスマスだしな」
「また来ようね」
「………ら、来年のクリスマスなら」
「うん!」
楽しそうに笑い合い、腕を絡め合って歩き出した恋人達とすれ違うと、モカは口から大きく白い息を吐いて僕を見た。
「早く帰って、私達もゴハンにしよっか」
食欲をそそる肉とニンニクの焼ける香ばしい匂いを嗅いで、モカは少し寂しそうに笑う。
「確か…そう、冷蔵庫に何かあったはずよ」
モカは、笑顔のかわいい素敵な女の子。
伸びやかな手足、サラサラの長い髪、はっきり遠くまでよく通る明るい声。
それに、僕の大好きな、出会った頃から変わらない優しい瞳。
まぁ、料理は苦手みたいだし、全てが完璧とは言えないけれど………
僕にとって、モカは最高の女の子なんだ。
だから、こんな風に笑うモカを見る時、僕は悲しい気持ちでいっぱいになる。
モカ、どうして気づかないの?
こうして街を歩く時、みんな、僕を見るのと同じくらい、キミを見ているのに。