White X'mas
「花に触れると元気が出ます」
私の目のことを考えて言ったのではなく、自分もそうだから、という口ぶりだった。
不安にしかめていた眉がほどけ、自然と笑みが浮かぶ。
「ありがとう」
コンサートやお祝いの時などに花をもらう機会はあるけれど、これは今までもらったどの花とも違っている気がした。
「あの……明日、そのバラの花束をプレゼントしてもいいですか?」
「はい?」
問い返したけれど、男の人の言葉はちゃんと私の耳に届いていた。
「それって……」
どういうことかと問いかけた私の声に、男の人の声が被さる。
「明日、楽しみにしています」
サッと目の前の空気が動いて、男の人が私に道を開いたのだとわかった。
会話終了のサインを残念に思う自分を新鮮に感じつつ、私は気配の動いた方向へと顔を向ける。