White X'mas
「黒い服ばかり着る、盲目の美人バイオリニストなんだってさー」
ガバッと顔を上げた俺に、兄貴がニヤつきながらチケットを持った手を伸ばす。
「クリスマスプレゼントだ。行って来いよ、店はどーにかするし」
店の中に入っていく兄貴にお礼も言えないまま、俺は独り言のようにつぶやいた。
「バイオリニストだったのか……」
兄貴が作っていた可南子ちゃんのアレンジは、赤いバラを使ったクリスマスらしく華やかなものだったはず。
だけど、俺なら……
通路脇のガラスケースに目をやると、花開く少し前の大ぶりの白バラ。
ホワイトクリスマス。
清楚で優雅な佇まいの、香り高い花。
以前から、彼女のようだと思っていたこの花を彼女に送りたい……