White X'mas
明日のことを考えながら、そろそろ店じまいにしようかと思っていた夕方、外から小さな女性の悲鳴が聞こえ、慌てて外に出てみると、そこに………彼女がいた。
初めての対面に気が動転している俺に気づくはずもなく、彼女は連れている盲導犬に何かあったのかと心配している。
「私には……見えないから」
その言葉の端に彼女の悲しみを見たような気がして、俺は思わず彼女の手を取り、あの花を差し出していた。
「メリークリスマス」
手袋越しじゃ、伝わらないかもしれないけれど。
この優しい花が、あなたを癒やしてくれますように………
そして、俺はこの偶然に乗じて大胆な申し出を口にしていた。
「明日……そのバラの花束をプレゼントしてもいいですか?」
そして、何か言いかけた彼女を送り出すように言い切る。
「明日、楽しみにしています」