White X'mas
「もう少しで家よ」
モカがそう言ったのは、家から2つ目の大きな交差点。
花の香りが漂ってくるこの場所で、モカはいつも僕に言う。
「今日も1日ありがとう。いっぱい歩いて疲れたよね。早く帰ってゆっくりしよう」
本当は自分の方が疲れているのに、僕にそう言ってくれるモカは、本当に優しい子だ。
出会った時から変わらない、僕の大好きなモカ。
僕らの部屋はここから横断歩道を2つ通った3軒目のマンションだけど、花をもらう機会の多いモカはこの場所で足を止め、自分で花を買ったことは1度も無い。
だけど、今夜は………
僕は思いきって、花屋の店先で急停止した。
ごめんね、モカ。
僕は心を決めたんだ。
「きゃっ」
モカの驚いた声に慌てて出て来たのは、この店で働いている男の人。
「大丈夫ですか?!」
「ええ…このコが急に止まって…」
モカが困ったように言うけど、僕は動かない。
だって、僕は知ってるんだ。
この人がいつも、モカを見てるってこと。
モカ、気づいてよ。
キミは、自分が思っているよりもずっとずっと、素敵な女の子なんだ…