夕焼けの彼方
第1章
我らが桜川の頭首!
うざい。
いや…小説の1番始めにくるような言葉ではないのだけれど。
てゆーかむしろ1番始めにきてしまうほど、アタシ―三條綺華―はかなりウザったく思っているわけでして。
アタシのイライラの原因はといえば…
「ZZzzz……」
超爆睡中。
(てめー…コンニャロー!)
その微かな寝息を聞きながら、ひたすらにペンをはしらせる。
そいつが寝返りを打つたびに立てる音が、またアタシのイライラを煽る。
…もう、なんか虚しくなってきたな。
横にある机を見ると…正しくは見上げると、まだ山のように紙が積み上げられている。
この分だと…一枚5分かかるとして、ざっと120枚はあるから……
(…止めた)
変なことに頭使うより、まずこの書類の山を崩すことに専念しよう…。
そう思ったアタシは目を元の書類に戻し、ペンを動かし続けた。
(あーいいなー、先輩は気楽で。ただ寝てるだけじゃない)
実はさっきさりげなく、てめー呼ばわりしていたのだが、この人一応先輩だ。
い・ち・お・う!
こんなのがアタシより年上だなんて…
「世も末だわ」
「へー。何で世も末なわけ?」
「だからー、他人に仕事任せっきりで、自分はのうのうと爆睡してる人がいるからです!」
「それは酷いことをするね」
「ですよね!すっげームカつくんですけど!是非とも親の顔が見てみたいわ!
……ってアタシ、誰と喋ってんの?」
声がする方を振り返った。
どっかで聞いたことがある声だった気がしたが、もしかして違うかも…。と、いうちっぽけ希望は安々と打ち砕かれてしまった。
「……羽矢先輩」
神様ってホント残酷。