クリスマスの約束


「でもさ、今年じゃなかった?」

「んー?」


まかないのパスタを食べ終わり、休憩もあと5分に迫った時、遠くのほうを見ながら奈津がぼそっと言った。

まるで独り言のようにも聞こえるけど、今ここにいるのは私たちだけだし、明らかに私に向けられたものだった。


「約束だよ。俊くんとの。」

「あー、そうだね。」


わたしも奈津が向いているほうに目を向ける。

久しぶりに聞いた名前に懐かしさを感じた。

俊、どうしてるのかな…。


「さっ!仕事仕事!」


あいまいにしたわたしに不服そうな顔をした奈津は何かいいたげだったけど、小さく溜め息をついて立ち上がり二人分の空になったお皿を持って先にキッチンへ入っていった。


あれから…あの日から、もう5年になる。
まだかな。まだかな。と、数えていた頃はとても長く感じたのにな。

今こうして、もうすぐ約束の5年が経つんだと思うとなんだか早かった。


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