The moment

スネアやシンバルを打ち鳴らし、バスを踏む。
スティックを振れば、カラスのメロディを叩き出す。

私に合わせて演奏してくれるTomoyaさん以外の3人と共に
ROCKをつくり上げていく。

途中、いくつか間違えた気がしたけど、大丈夫だと心に告げて
一生懸命叩ききった。
一緒に出来るなんて思ってもなかったから
すごく嬉しい。

「…ふう」


演奏がおわり、一息ついていると
4人のメンバーがそれぞれの楽器を置いて、私の周りに集まってきた。

「なつのちゃん、すごいやん!上手いやんけ!」

「少し会わんうちに上達したなぁ」

と、Tomoyaさんと良太兄。


「技術はかなり上やから、あとはパワーやな」

「そうだね。俺が言えることじゃないけど、あと一息ってとこかな」

と、ToruさんとTakaさん。

褒めてくれる言葉もあれば、アドバイスのような言葉もある。
1人1人が、それぞれ色々な表情で色々な言葉をくれる。

良太兄が私の頭に手を乗せて、にこりと笑いながら
頭を撫でた。

「さすがオレのイトコやな!オレに似てリズム感ある…ぐはっ」

いきなり良太兄がうずくまったかと思うと
Toruさんが持っていた本がおなかに直撃していた。

「『オレに似て』は余計や」

「りょ、良太兄…大丈夫?」

おなかを押さえて床に突っ伏す良太兄にあわせてかがむと、
彼はぷるぷる震える手をあげて、大丈夫や、いつもの事やから。と言った。

いつものこと。
私はオウム返しのように苦笑しながら呟いた。

「良太起きれー!!はよせんと、時間なくなるでー!」

Tomoyaさんがぶんぶんスティックを振り回す。

Takaさんが手を差し出すと、良太兄はその手を掴み
立ち上がった。

「ありがとう森ちゃん」

「ん」

Takaさんはにっこり笑った。
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