The moment

ドアを強く引くと、黒と白が視界いっぱいに広がった。
モノクロ調にまとめてある私の部屋。

黒い壁には、雑誌のふろくのポスターや、
プリントアウトしたワンオクやChampagneなどが
ところ狭しと並んでいる。

真っ白な勉強机、黒いカーテンとカーペット。
床とドアも白くまとめてある。


私はこのモノクロの中で、唯一の「赤い」ベッドにダイブした。

「あ゛ー…」


こんな風にダイブしたのは何日ぶりだろう。
私は本当に悩みがあるときだけ、ベッドにダイブする癖がある。


無言でベッド脇のスティックに目をやる。
刻まれた青いラインは、小学6年生の時にペンで書いたやつだ。

いつも握るとこだけが少しへこんでて、
あの頃は無駄に力を入れすぎていたことが見てとれた。


うつ伏せになって、ぱたぱた足を動かしてみる。

「……」

あの日、あの4人と過ごした時間が忘れられない。
何もかも、鮮明に覚えてる。

特にあの、ドラムを叩くともくんの姿。
あのとき、ほぼ無心だったけど、でも確かに
格好いい、って。そう思った。

これは単なるリスペクト、尊敬の気持ちだよね?


夕焼けに染まる窓をしばらく眺めていた。
< 16 / 29 >

この作品をシェア

pagetop