The moment
木曜の夕方6時頃、唐突にオレのスマホが震えた。
液晶画面には「貴崎なつの」の文字。
「あれっ良太、電話?」
「うん、なつのから」
今は事務所での休憩時間。
オレらは4人それぞれで、休憩スペースでお茶を飲んだり、
まだスタジオに残って練習したりしている。
森ちゃんは部屋で新曲の歌詞を考えとった気がする。
オレはというと、休憩スペースでともくんと
戯(たわむ)れていたところだった。
「もしもしー?」
『あっ良太兄!今、大丈夫?』
良く通る綺麗な声が聞こえた。
この時間やと、たぶん部活が終わったくらいだろうか。
何の用やろう?問いかけてみると、
なつのは『お願いがあって』と言った。
「お願い?」
『うん!もし良かったら、良太兄の家に住ませてほしいの!』