The moment
階段の先には廊下があって、その左右の壁には合計5つの扉があった。
良太兄は一番奥の、廊下の突き当たりを指差して言った。
「あの一番奥のが、いつも使ってるとこ」
良太兄の瞳に、ぱぁぁと明るくなる私の笑顔が映ってた
。
そっか、そうなんだ。
あの扉の向こうにワンオクが…
━━がちゃっ
良太兄が扉を開けると、賑やかな笑い声が耳に飛び込んできた。
「━━やったんや、それが」
「ほんまおもろいなぁそれ!あ、良太!」
「遅えよばか!」
………!
Takaさん、Toruさん、Tomoyaさん。
目の前で3人が、良太兄を笑いながらばしばし叩いてる。
目の前で、3人が。
「…ん?この子が電話で言ってた子?」
Takaさんが私に気付いて言うと、3人の視線が私に向けられた。
有名人にここまでじーっと見詰められると、心臓がドキドキしてくる。
早まる鼓動。
今たぶん私、真っ赤なんだろうな。
「なつの、自己紹介」
ぽそっと良太兄に言われ、はっと我に返って深呼吸した。
意を決すと、自己紹介を始める。
「き、貴崎なつの18歳です!ドラムやってます!とっ、Tomoyaさんに憧れてます!!
よろす…よろしくお願いしますっ!」
やばい、噛んだ。