The moment

曲が終盤に差し掛かるに連れて
ざわざわと鳥肌が立っていく。

この曲に込められた思いが、心にすっと入ってきて、
色々な感情が芽生える。


「びぎにーん!!」

演奏後にTomoyaさんが叫んで、
その余りにも発音が悪いことに笑ってしまった。

演奏自体は本当に素晴らしかったのに…
最後の最後でこれはないよ。

これもTomoyaさんだから許されることなのかな。
私は真っ赤になった腿を撫でた。


「うわぁなつのちゃん、足真っ赤じゃん。
どうせならドラム叩きなよ。智也が退くから」

「俺退くんか」

Takaさんの気遣いは嬉しいけど、でも
それじゃワンオクのみんなが練習出来ないし。


「ほらほら、遠慮しないで。どうせスタジオのドラムなんだから」

「ええよ、気にせんでな」


迷っているのが分かったのか、みんなはやさしく対応してくれる。

ここまで言ってくれてるなら、断るのも失礼なのかもしれない。


「じゃあちょっとだけ借りますね」

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