けぶる緑の奥に隠した、私の愛する永遠の少年。(短編)
マリは今日も、両親が経営する喫茶店を手伝いながら、ウェイトレス気分を味わっている。
夏休みはいつもそう。
お客さまは、みんな私をほめてくれるし。
ちょっとくらい失敗したって平気。
何をしたって可愛がってくれる。
引っ込み思案の妹は、店の手伝いなんてしないけど。
マキはお客さまがいる時、二階の自分の部屋に籠って出てきやしないわ。
でも私は、こうゆうの大好き。
人と話すのは楽しい。
自分の知らない世界を教えてくれるもの。
街には天に届きそうな、高い建物がたくさん、立ち並んでいて。
夜になり、見上げると、それはキレイに煌めくんだって。
私はキラキラ光り輝くものが大好きよ。
私はいつも裏庭の丘の上から見渡すだけ。
それはそれで、美しい光景ではあるけれど…。
森にでれば、朝の清潔な空気。
木の葉の先に朝露が光る虹色の世界。
むせかえる緑の匂い。
そうね。夏の蛍の光も素敵ね。
そうね。だけど街にでれば、私の見た事のない美しいものが、きっとたくさんあるのでしょうね…。
いつか、この世界の美しいものすべて、手にいれてみたいわ。
< 22 / 43 >

この作品をシェア

pagetop