けぶる緑の奥に隠した、私の愛する永遠の少年。(短編)
「お兄ちゃん。」
私は、彼の細い首筋を引き寄せた。
「…?」
同じ身長の彼と私は、まるで猫がじゃれあうみたい。
抱きしめても、とても冷たい。
私、彼に自分からキスをしたの。
白くて、とても冷たいキス。
初めてだったけど、とても悲しいキスだった。
だって、そこには未来が無いから…。
私、気付いてしまったの。
同じ目線で、同じ時間を過ごせるのは、今だけ。
彼と同じ子供でいられる、短い時間だけ。
そうよ。これから私は年を重ねて、大人になるの。
来年だって、再来年だって、誕生日はやってくるわ。
一日のすべての時間を、生きてる。
彼は…?
一日のほんの短い時間しか、存在することを許されない。
同じ時間を、重ねて行けるはずがないの。
一緒には、生きて行けないの…。
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