冷徹ドクターに甘やかされてます



(…あった、)



やってきた、中央病棟の一番端。長い廊下の一番奥にある大きなドアのところには『院長室』の文字

日頃近付く人もあまりいないのであろう、ひと気のない廊下でこそこそとドアへと近づく



(…少しドア開いてる…)

建て付けがあまりよくないらしいドアはほんの少し開いており、私は息を潜めそこから室内をそっと覗き込んだ。



「…ー…」



「…ー、」



(いた…)

赤い絨毯が一面に敷かれ、真ん中に大きなデスクが置かれたその部屋では、こちらに背中を向け立っている春田先生と向かい合うようにして椅子に座っている60歳くらいの男性の姿がある。



(あれが院長先生…)


今まで会ったことはなかったけれど、年齢にしては若く見えるその人は確かに春田先生のお父さんであることを確信させるかのようによく似た顔をしている。



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