今日のディナーは何にする?
 

「あ、っと、その前に」

「へ?っ!?」


ピタッと足を止めたシンさんがひょいと屈んで、私の顔を覗き込んできた。

突然のことに驚いて、私は後ずさろうとしたけど……


「っ!?」


シンさんの指が私の指に絡みつき、それを許さなかった。


「あっ、あのっ……!?」

「お会計って、まだでしたよね?」


にっこり。

……ドキンっ!

近距離で見せられる笑顔も、繋がれた手の温もりも、シンさんの行為全てが、私の焦りと鼓動の速さを助長させていく。

顔が一気に熱くなったのを感じ、それを誤魔化すように私は慌てて口を開いた。


「あっ、そっ、そうですね!払います!今すぐに!」

「ありがとうございます。……じゃあ遠慮なく、いただきますね」

「へ……、んむっ!?」


ふと視界が暗くなったと思ったら、目の前にはシンさんの顔。

私の頭を包む大きな手。

唇には柔らかくて温かくて湿った感触。

こっ、これ、って……っ!?


「し……んっ、っ」


シンさんの名前を呼ぼうとするけど、ちゅっちゅっと食むように唇が何度も合わせられて、それは叶わない。


「ん……っ、」


……戸惑いはあるのに……触れる唇がすごく気持ちよくて、もっとして欲しい、って思った。



……気付けば、私はシンさんのジャケットをぎゅっと掴んで、シンさんにされるキスにただただ酔いしれていた。

 
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