今日のディナーは何にする?
 

「……っ、んっ」


ちゅっと音を立てて、シンさんの唇が私から離れる。

二人の吐息がその間で混ざり合った後、おでこ同士がコツンとぶつかった。

ゆっくりと目を開けると、5センチの距離にシンさんの顔。


「っ!」

「……さっき、“好き”って言ってくれましたよね?」

「……え?」

「言ってくれたよね?好きだ、って」

「……」


好き、なんて言った……?

働かない脳みそを頑張って回転させると、ある記憶に辿り着いた。

もしかして、“ここが好き”って言ったこと……?


「……あ、そう、ですね」

「……好きなのって、この店だけ?」

「……え?」

「……何が好きなのか、もう一度ちゃんと教えてくれない?」

「……っ!」


じっと私の心を見透かすようなシンさんの瞳に捕らえられて、狼狽えてしまう。

何でそんな目……っ!


「……教えて。二宮さんの、心の中」

「っ!」


……もしかして……私の気持ち、バレてる?

こ、こういう時って、どう答えれば……

「このお店が好きです!」って笑い飛ばす?

……それとも、素直に告白する?

いや……、でも、もし玉砕してここに来れなくなるの嫌だし!

どうすれば……


「……お願い、教えて」

「……っ」


懇願するようなシンさんの言葉と表情。

……ダメ。

誤魔化すなんて……嘘をつくなんてできない……。

本能に導かれるまま、私は1年間抑えていた気持ちを口にしていた。


「私……」

「……うん」



「…………シンさんが……好きです」

 
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