今日のディナーは何にする?
 

「らっしゃーい!」

「!」


ほわっと目の前から飛び込んできた暖かい空気と声に、つい足を止めてしまった。

でもすぐに背後からの冷たい空気に押されて、慌てて後ろ手で扉を閉めた。

全身が暖かい空気に包まれ、頬に熱が戻るのを感じる。

店内を見渡すと、お客さんは一つのテーブルに向かい合って座る、背広姿のサラリーマン二人組だけ。

クリスマスだからか、いつもそうなのかわからないけど、その光景はお世辞にも繁盛しているとは思えなかった。

カウンターの向こうから白い調理着を来た30代くらいの男の店員さんが姿を現した。


「いらっしゃいませ!」

「!」


私の姿を認めてその店員さんににこっと笑みが浮かんだ瞬間、私の心臓が何故かドキンっと跳ねた。

鼓動が速くなったせいか、すっかり冷えていた身体に血が活発に巡り始め、じんわりと体が熱を取り戻していくのを感じる。


「扉近くは寒いので、奥にどうぞ」

「あ、はい……」


促されるままに歩みを進め、案内されたカウンターに腰を下ろす。

 
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