今日のディナーは何にする?
 

「これメニューです」

「あ、どうも」

「えっと、お客さんは」


店員さんがメニューを差し出して話し掛けてきた瞬間、背後から声が聞こえてきた。


「シン!お会計頼む~」

「あっ、はいはい!すみません。ちょっと待っててくださいね」

「あ、はい……」


「やっぱり相馬のラーメンは宇宙一だね!」とサラリーマンたちがご機嫌な感じで、店員さん……シンさんに話しかける。

その言葉に、「いつもありがとうございます」とシンさんの顔に満面の笑みが浮かんだ。

目尻に皺が寄って、まさに“くしゃっとした人懐っこい笑顔”で、すごく目を引くものだ。

わ……何か、いい……!目の保養!

つい見惚れてしまって、お会計をする姿から、お客さんを見送る姿まで、私は終始、シンさんに釘付けになっていた。



……はっと気付いた時には、店内には私とシンさんの二人だけが取り残されていて、目の前にシンさんが立っていた。


「わっ!?」

「お待たせしてすみません」

「あっ、いえ!そんな!」

「外は寒かったでしょう?すぐに温かいお茶用意してきますね」

「あっ。ありがとうございます」


私の言葉ににこっと笑ったシンさんはカウンターの向こうに消えていく。

そのしゃんと背筋の伸びた後姿に、また見惚れてしまった。

 
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