今日のディナーは何にする?
 

……一人なのかな?

それとも奥に他の店員さんがいるのかな?

耳をすましてみるけど、会話や音は聞こえず、シンさん以外の人がいそうな気配はない。

もしかして、シンさんがラーメン作るの?と思ったら、何となく味への期待がしぼんでいった。

ラーメンと言えば、やっぱりおじさんが作るものでしょ?

たまにラーメン屋さんに行くけど、どこもラーメンを作っているのは恰幅のいいおじさんばかりだ。

経験から、頑固そうなおじさんほどおいしいラーメンを作る、というイメージが私の中に勝手に作られていた。

メニューに目線を落とす。

とんこつラーメンを始めラーメン数種、煮玉子やチャーシューなどのトッピングの数々、餃子、白ご飯、ビールなどなど。

ごくごく普通のラーメン屋にあるようなメニューが並ぶ。

シンプルなラーメンなら味が微妙でも、まぁ許せるだろう、と注文する品を決めた時、湯気が上がる湯飲みがコトンとカウンターに置かれた。


「お待たせしました。どうぞ」

「あっ、どうも」

「……お客さん、初めて、ですよね?来店していただくの」

「えっ?あ、はい。初めて、です」

「やっぱり!何か食べられないものは?」

「や、特に……」

「じゃあ~これにしましょう!相馬特製ラーメン!オススメです!」

「えっ?」


メニューの1つを指差したと思ったら、ささっとメニューを閉じられた。

 
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