今日のディナーは何にする?
 

え、待って、何この人?客にメニューも選ばせないの?と少し不信感を抱いてしまって、シンさんを見上げる。

文句の1つでも言ってやろうかと思ったのに、そこにはにこにこと楽しそうな笑顔があった。

う……っ!

その笑顔に、文句を言おうなんて気持ちは一気にどこかに飛んで行ってしまう。


「うちの自慢のとんこつラーメンなんです!ぜひ食べていただきたい!今日という素晴らしい日に!」


目をキラキラさせて力説してくるシンさんがかわいく見えて、つい吹き出してしまった。


「……ぷっ」

「え?」

「あ、いえ。じゃあ、それでお願いします」

「まいどっ」


無邪気に笑いかけてくれるシンさんにつられてしまったのか、私も気付けば気が緩んでいて笑顔になっていた。




……ずるるるっ。


「……うまっ!」


何これ、何これ、何これ……!ほっぺ落ちる!

人生で食べてきたラーメンの中で断トツのおいしさだ。

こってりそうに見えるのに、食べにくいような重さは全くなくて、するすると箸が進む。

麺の固さや食感はもちろんのこと、全部飲み干してしまいたいくらいの旨味のあるスープは絶品だ。

私は夢中で麺とスープを口に運び続け、あっという間に食べ終わっていた。

普段はしない替え玉まで、してしまうほどだった。

 
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