君と歩いていく道
この包帯の下に、命を絶つための傷があるなんて考えたくない。
ようやく再会できたのに、嬉しさよりも悲しさの方が勝っている。
何も無い部屋の中で死んだ様に眠るなんて、まるで童話に出てくる眠り姫のようだと思って唇を重ねても、冷たいだけで反応はない。
「起きて、幸也って呼べよ‥‥。」
もう1年以上呼ばれてないのだが、求めてしまう。
その時聞こえた控え目なノックで大月が戻ってきたのだと思い、押谷はドアを開ける。
そこにいた人物は、大月だけではなかった。
「紺野・・・。」
「・・・押谷?」
学校は違えど、同じコートに立っていたので知っているが、お互いになぜここにいるのだという視線を大月に投げかける。
紺野にだけでも話しておけばよかったと、大月は後悔した。
このままドアを開けっ放しにすれば色々と面倒なので、とにかく病室に入る。押谷は明らかな敵意を紺野に向けているし、紺野は相変わらず無表情で押谷を見ている。
溜め息を隠さずに話した大月の言葉を、押谷は素直に信じることができなかった。
紺野は真崎の恋人だということを。