君と歩いていく道
同時に憤りも感じる。
何故隣についていながら守れなかったのだと、殴りたい衝動に駆られる。


「何でお前がついとって、守れんかったんだ。」

「やめなさい押谷君、彼女が起きてしまいますよ。」

「起きればいい。死んだ様なあいつなんて、見たくないからな!」

「押谷君!」


紺野はただ黙って、押谷と大月のやり取りを見ている。


「なんとか言ったらどうだ!」

「・・・言いたいことはそれだけか。」


取り乱した押谷とは異なり、紺野はどこまでも冷静だった。
ずっと真崎が壊れていくのを見ていることしか出来なかった。一番傍にいたのに、止めることが出来なかったと辛かったのは彼だった。

どうしても予定していた大会をキャンセルすることができずに、真崎の傍にいてやることが出来なかったと、大月に胸の内を吐いたばかり。
押谷に責められることは、当然だとでも思っているのかもしれない。


「確かに俺は知っていて止められなかった。」

「やめなさい紺野君。貴方は十分止めました。だから彼女は生きている!」


大月の見た、紺野の傷跡。

恐らく真崎の刃物を止めたのだろう。手の指の付け根には、深い切り傷の跡が残っていた。これだけ深ければラケットを持つのも辛かっただろうに、紺野は傷跡を見つめながら悔しそうな顔をした。
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