君と歩いていく道
『止められなかったのは、俺の力が至らないせいだ。』
大月はそうは思わなかった。
人間、誰にでも衝動に駆られることはある。
自傷行為が続いていたのは真崎の傷跡を見ればすぐにわかるが、大事な手を傷つけてまで彼女を止めた紺野は称賛に値する。
左手首の傷が浅かったのは、きっと紺野のお蔭なのだ、と。
今にも掴みかかりそうな押谷を止め、殴られても仕方がないという様な紺野の間に入る。
睡眠薬で眠っている真崎が起きる気配はなく、こんな所を見られなくて済むと思えば気は楽だった。
「鏑木のおっさんも、知ってたのか?」
ようやく落ち着きを取り戻した押谷が、紺野に事の真相を求める。
「いや。このところ連絡は取っていない。」
「昨日ここに来ていましたが、鏑木先生も知らないような感じでした。ただ・・・。」
「ただ?」
大月の言葉に、押谷が聞き返す。
今ここで押谷に伝えないと、きっと紺野を恨んだまま真崎のことを引きずることは目に見えている。
「真崎さんは、紺野君を選んだんです。彼しか、知らないことは多い。」
押谷は悔しそうにドアを開けた。
そして背中越しに言葉を投げる。それはどこか投げやりな感じでもあった。
「邪魔者で悪かったな。さいなら。」
「・・・押谷。」
静かに閉められたドアが、押谷の冷たい苛立ちを表しているようだった。
大月はそうは思わなかった。
人間、誰にでも衝動に駆られることはある。
自傷行為が続いていたのは真崎の傷跡を見ればすぐにわかるが、大事な手を傷つけてまで彼女を止めた紺野は称賛に値する。
左手首の傷が浅かったのは、きっと紺野のお蔭なのだ、と。
今にも掴みかかりそうな押谷を止め、殴られても仕方がないという様な紺野の間に入る。
睡眠薬で眠っている真崎が起きる気配はなく、こんな所を見られなくて済むと思えば気は楽だった。
「鏑木のおっさんも、知ってたのか?」
ようやく落ち着きを取り戻した押谷が、紺野に事の真相を求める。
「いや。このところ連絡は取っていない。」
「昨日ここに来ていましたが、鏑木先生も知らないような感じでした。ただ・・・。」
「ただ?」
大月の言葉に、押谷が聞き返す。
今ここで押谷に伝えないと、きっと紺野を恨んだまま真崎のことを引きずることは目に見えている。
「真崎さんは、紺野君を選んだんです。彼しか、知らないことは多い。」
押谷は悔しそうにドアを開けた。
そして背中越しに言葉を投げる。それはどこか投げやりな感じでもあった。
「邪魔者で悪かったな。さいなら。」
「・・・押谷。」
静かに閉められたドアが、押谷の冷たい苛立ちを表しているようだった。