君と歩いていく道
溜め息をついた大月に、紺野が一言〝すまない〟と謝った。

別に紺野を責めたりはしない。
押谷だって、ほとんどただの八つ当たりだろうと大月は読んだ。

ここに来ていたということは、押谷は真崎に会いに来ていたと言うことで。
それは彼女のことを忘れることが出来ていないと言っているようなものだ。実際、大月は真崎と別れた直後の押谷を見ていたので、そのあたりはよく知っている。


「押谷の怒りは俺が受けるべきものだ。」

「あんなの、ただの八つ当たりですよ。」


大人気ないにも程がある。それを真面目に受け止める紺野も紺野だが。
実直で不器用な彼だからこそ、真崎も選んだのかもしれない。押谷は確かに人の機微に聡いが、何でも器用にこなしてしまうために、つかみどころのない人間だ。

「で、いつまでいられるんですか?」

出来れば、退院するまでついていてやって欲しい。

「ああ。マネージャーに頼んでスケジュールを開けてもらった。退院するまでと、言いたいが・・・。」

いつ、退院できるのか分からない。
紺野だって、すぐに連れて帰りたいとは思うのだが。

「そうですね。彼女もこんな所にいつまでもいたくないでしょうし。」

かといって、マスコミに追い回されるのは目に見えている。逆戻りなんて、簡単だろう。
ましてや紺野と人前に出たら、それこそ恰好の餌食だ。
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