君と歩いていく道
思慕
二人が出会ったのは、友人を介して。
たまたま友人からもらったチケットで、真崎のコンサートを見に行ったのがきっかけだ。
紺野はクラシックが嫌いではなかったし、チケットを紺野にくれた友人の水瀬も、気分転換をしにいくぞと言ってくれた。
新鋭だと噂されるピアニストのコンサートは、通常のクラシックとは一味も二味も違って新鮮だ。
コンサートホールも人で埋め尽くされて、壇上では年若い少年が頭を下げた。
自分より年下だろうと、思ったのだが。
気に入って買ったパンフレットのプロフィールには、自分より一つ下の女性だと明記されていて驚いた。
チケットをくれた友人と、さっきまで舞台で演奏していた人物が親しげに話しているのを見かけて、なんとなく視線を向ければ友人に見つかって呼ばれた。
「玲、紺野だ。」
「ああ、信吾からよく聞いてます。ライバルだったって。」
舞台の上では本当に華奢な少年にしか見えなかったが、近くで見れば女性だった。女性にしては高い身長も長い手足も、紺野と水瀬の前ではそう大きくは見えない。
財閥の跡取りである友人・水瀬信吾のことを呼び捨てにするぐらいだ。
仲は良いのだろう。
「よろしく。」
「ああ。いい演奏だった。」
「ありがとう。」
差し出された手は白かったが、女性にしては少し無骨だ。それでも、テニスで鍛えた握力で握れば折れてしまいそうで怖かった。
たまたま友人からもらったチケットで、真崎のコンサートを見に行ったのがきっかけだ。
紺野はクラシックが嫌いではなかったし、チケットを紺野にくれた友人の水瀬も、気分転換をしにいくぞと言ってくれた。
新鋭だと噂されるピアニストのコンサートは、通常のクラシックとは一味も二味も違って新鮮だ。
コンサートホールも人で埋め尽くされて、壇上では年若い少年が頭を下げた。
自分より年下だろうと、思ったのだが。
気に入って買ったパンフレットのプロフィールには、自分より一つ下の女性だと明記されていて驚いた。
チケットをくれた友人と、さっきまで舞台で演奏していた人物が親しげに話しているのを見かけて、なんとなく視線を向ければ友人に見つかって呼ばれた。
「玲、紺野だ。」
「ああ、信吾からよく聞いてます。ライバルだったって。」
舞台の上では本当に華奢な少年にしか見えなかったが、近くで見れば女性だった。女性にしては高い身長も長い手足も、紺野と水瀬の前ではそう大きくは見えない。
財閥の跡取りである友人・水瀬信吾のことを呼び捨てにするぐらいだ。
仲は良いのだろう。
「よろしく。」
「ああ。いい演奏だった。」
「ありがとう。」
差し出された手は白かったが、女性にしては少し無骨だ。それでも、テニスで鍛えた握力で握れば折れてしまいそうで怖かった。