君と歩いていく道
包帯だらけの腕で空を踊る真崎の手は、見ていて目を背けたくなるほどに痛々しい。
大月が消毒や包帯の巻きなおしを手早く済ませ、カルテを広げる。


「こんにちは。だいぶ落ち着いたようですね。」

「こんにちは、先生。」


いつもよりも明るい声は、やはり紺野がいるからだろう。死にたがっていた初日とは態度が正反対だし、表情も少し明るい。

「真崎さん、ピアノが弾きたいですか?」

今まではピアノの話題を避けていたが、空で鍵盤を求めるほどになったのならば、聞いても良いだろう。
真崎は少し驚いた顔を見せた後、恥ずかしそうに頷いた。


「人目についてしまうところでも良ければ、アップライトのピアノがありますよ。」

「ほんとですか?」


嬉しそうに身を乗り出して、真崎は詳しく教えてくれとせがんだ。
小児病棟の中のレクリエーションルームになってしまうが、一応あることは確かだ。時折ピアニストを呼んで、入院している子供への慰問を行ったりもする。

彼女の心が少しでも回復するのなら、カウンセリングの材料になるのなら、使ってもいいだろう。


「では、少し行ってみましょう。マスコミも、今はいませんから。」

「お願いします。」


真崎は何も考えてはいないだろうが、紺野はマスコミが今はいないということに疑問を持っていた。
視線を感じた大月は、目配せする。
示された方向には、水瀬の車が停まっていた。
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