君と歩いていく道
生あくびが本当のあくびになり、真崎は眠たくなってきた。


何も考えたくない。


考えられない。


明日が早く来ればいい。


ああ、ちゃんとピアノが弾けるようになったら、子供達との約束を果たさなければ。
そんな事を思いながら、何か大事なことを忘れていることに気がつく。



「なんだっけ?」



・・・まあ、いいや。

独りで呟いた言葉は部屋に消えていった。

真崎の心は忘れようと必死で働いている。
もう少し彼女が強く自分を保てるようになるまでは、思い出してはいけないから。

いつか真崎も自分の音を取り戻す日がくるだろう。
それまでは、忘れていた方が良いことなのだ。


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