君と歩いていく道
明け方になって咳こんだせいで目が覚めた真崎は、顔を洗ってから財布を持ってエントランスへ向かった。
水が嫌いなわけではないが、たまにはジュースも飲みたい。
エントランスには自販機があったし、院内も自由に歩けないほど制約されていないので、ナースセンターに一言告げてから静かな朝の廊下を歩いて行った。

自販機の前には誰もいなかったが、そばには一人の白衣を着た医師がコーヒーを飲んでいる。


「・・・玲?」

「え?幸也?」


お互いの姿に見覚えはありすぎて、二人は驚く。

押谷は一応彼女の担当医だったのでそこまで驚きはしなかったのだが、朝に弱かった真崎がこんなに朝早く起きてくるなんて思っていなかったので、そういった意味で驚いた。



「幸也、この病院だったんだ。」

「・・・ああ。」

押谷の横に座って、真崎は買ったばかりのジュースの蓋をあけた。


「なんだ、まだコーヒー嫌いなのか。」


昔から変わっていないのを笑うと、真崎は照れたようにジュースを飲んだ。

「図星だな。」

「うるさいな、ブラックしか飲まないからって。」

「うらやましいのか?」

不思議な空気に包まれた朝は、数年の空白を埋めるようだった。

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