君と歩いていく道
言葉が途切れても嫌な雰囲気になることはなく、かといって付き合っていた頃のように何かを求めるような言葉も出ない。
ただ、旧友が再会したような、それだけだった。


「今日、退院するんだろ?」

「うん、多分。傷の具合次第じゃない?」


押谷は真崎の包帯の巻かれた腕を取り、解いて傷口を目の当たりにした。

「これ、俺が縫った。」

苦笑しながら話す押谷に、真崎は驚きを隠せない。
ふさがりかけた傷口は、もう抜糸をしても大丈夫なぐらいまでになっている。

「そっか。驚いたでしょ。」

「まあ、な。」

悲しげな顔をした二人は、人の増え始めたエントランスで浮き立っていた。
それでも、場所を変えることはしない。


「なんかね、うわーってなったんだ。」

「うん。」

「死にたかった。」


押谷は黙って真崎の話を聞いている。
彼女も押谷になら話せる気がして、言葉を止めることはしなかった。

「それ以外何も覚えてないんだけどね。」

苦笑した真崎の頭を子供にするように撫でて、押谷は自分の方へ倒した。


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