君と歩いていく道
運動部のマネージャーだったからか、心をくみ取ることが人より得意だった大月が、精神科医となったのは正解だった。
腕の良い新人医師として、評判は高い。

大月としても、順風満帆だと報道されていた彼女が何故自殺未遂などと、気になっている。
音楽界からは期待と反発の両方が寄せられていた。

それでもピアニストとして活動していた真崎を引き抜いたのは、有名な交響楽団だったはず。世間的にも音楽界的にも認められたのだろうと、評価は高まっていくばかりだ。

その矢先の自殺未遂。

話題作りだけでここまでやるとも思えない。
死んだ様に眠る真崎の外科カルテを見ながら、推測だけが大月の頭を占領した。

静かな部屋に響くノック音が、現実に引き戻す。


「はい、どうぞ。」

「失礼、真崎玲の病室はここだと聞いたのだが。」

「ええ、そうです。鏑木(かぶらぎ)先生、お久し振りですね。」

「3組の大月か。」


思わぬ教え子との再会に、驚きの声を洩らしたブラウンのスーツを着込んだ鏑木。
大月は座っていた席を譲った。
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