君と歩いていく道
もたれかかるような姿勢になったが、不快ではなく、真崎は目を閉じる。
閉じた目からは、涙が一筋だけ流れ落ちた。


「忘れたらいい。忘れて、紺野とアメリカ行って、幸せになるんだ。」

「あれ?知ってたんだ。」

「俺も、テニス部だったし。」

「そっか。」


掴みかかったことは、言わないでおこう。
頭を抱えられた真崎には押谷の表情が見えないが、少しだけ震えている手が全てを教えてくれるような気がした。


「ありがと、幸也。」


真崎は押谷に全体重をかけることで、気持ちを表現したかった。

二人で過ごした日々は変わらずに押谷の中で息づいている。
忘れられないのは、今も真崎のことを想っているからだ。
それは押谷自身も分かっている。

だが紺野なら、きっと真崎を幸せにすることができるだろう。

そう信じて二人を応援しようと決めたのだ。



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