君と歩いていく道

旅立

エントランスに堂々と止められたリムジンから、水瀬と紺野は降りてきた。
荷物はもう水瀬家の自家用ジェットに乗せてあり、あとは人が乗るだけになっている。
マスコミは一切寄せつけられてはいない。それには鏑木の協力もあるようだった。

「ありがとう、大月先生。」

「いいえ。お大事にしてください。」

少ない荷物を大月から受け取った真崎は、頭を下げて二人に向きなおる。
嬉しそうな顔を見せたかと思えば、走り寄ってつまづいた。
照れ笑いで失敗を隠そうとするところが、水瀬に溜め息を吐かせる。
紺野は大丈夫かと駆け寄るが、特に心配はいらないようなので注意だけで留まった。


「大月先生、また!」


手を振って車に乗ろうとした真崎は、ふと視線に気がついてもう一度振り返った。
そして視線の主に小さく手を振った後、水瀬に急かされて乗り込む。

紺野は誰に手を振ったか何とはなしに気づいてはいたが、振り返って確認だけした。

視線の先にいたのは、押谷だ。

確信めいたものはあった。
それに、あまりにも真崎を見送る視線が切なかったので、大月ではないこともすぐにわかる。

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