君と歩いていく道
彼女はいつしかドレスを脱ぎ、タキシードで演奏するようになった。
それなりに凹凸が出始め、今からドレスが似合う頃になって、突然。

理由を問いただせば、
『肩を出して演奏するのがどうにも落ち着かないから。』
と、なんともマイペースな返答が返ってきた。

今度のコンクールでは、ドレスをプレゼントしようと思っていた矢先だったのに。

タキシードの真崎は中性的な容姿のせいで、いつしか男装をしていると言われ、一部の審査員から批判を受けた。


それでもプロになれたのだから、不思議だ。


子供のころはめちゃくちゃなピアノを弾く奴だと思っていたのだが、だんだんと真崎の技術が上がっていくにつれて、それが感情表現なのだと気付いた。

水瀬は真崎のピアノが好きだ。
いつのころから好きだったのかは忘れたが、彼女のピアノを聞けば苛立ちが治まる時もあるぐらいに。

だから水瀬にとって真崎のピアノが無くなるのは、大事なものを失うに等しいのかもしれない。
彼女自身も、水瀬には大事な幼馴染なのだから。
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