君と歩いていく道
誰よりも傍にいて、支えてやりたいと思ったのに、肝心な時に傍にいることが出来なかった。大会のせいだとは言え、それだけでは気持はおさまらない。


「光博のせいじゃない。弱い自分が、悪いんだよ。」


どれだけ穏やかに真崎が笑いかけても、紺野の腹立たしさは消えることはなかった。


「お前は弱くなんかない。」

「ああ。誰だってスランプぐらいあんだろ。」


水瀬も助け船を出して、真崎を庇う。
押谷にも責められた紺野だが、実は少しだけ水瀬にも責められていた。

だが、真崎としては自分よりもテニスを優先してほしいと思っているし、自分だってもしかしたら紺野よりもピアノを優先する時があるかもしれない。
仕事だから仕方がないのだと、それだけは変わることはない。だから彼が自分を責めるのが心苦しいのだ。


「普通の女の子なら、私と仕事、どっちが大事なのよ!って、言うんだろうけど。」

次元の違うことを引き合いにだそうとは、思ったこともない。

「それに対して『お前の方が大事だ』って言う男は、嫌だな。」

押谷が昔がそういったことを思い出しながら、苦笑する。
紺野は不思議そうだが、水瀬は馬鹿にしたように鼻で笑った。

「変な女だ。」

彼には言われた経験があるのかもしれない。

< 47 / 99 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop