君と歩いていく道
安心したように表情を緩めた紺野に、真崎も安心したように微笑んだ。
彼が傍にいなかった事を責めていないと、どうしてもわかってもらいたかった。


「俺は、お前もテニスも同じぐらい大切に思っている。」

「ハッ。言うようになったじゃねーか。」


水瀬に茶化され照れながらも、紺野は真摯な瞳で真崎に告げた。

それは何よりもうれしい言葉かもしれない。
彼にとってテニスはプロになるほど大切なものだ。それと同列に並べるなんて、本当に認めてもらえている証拠のようなもの。


「維持してもらえるように、頑張らないとね。」


真崎は微笑む。

決意を表すような言葉からは、死ねばよかったと言った時のような、病的な悲愴さは微塵もない。
今は楽団から離れて忘れているだけなのだろうが、この先紺野が傍にいれば死にたいと言い出すことはないだろうと、水瀬は思う。

〝変な女〟である彼女に、不器用な紺野はぴったりだったのかもしれない。
その不器用な男に、テニスと同列に並べさせるぐらいの幼馴染は、ある意味大物だとも。


存在の大切さを、互いが互いに教えられている。


水瀬は安心して二人を見た。



飛行機は、新しい土地に向けて旅立とうとしていた。



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