君と歩いていく道
二人
真崎がアメリカに渡ってから一年が経とうとしていた。
ピアノを弾くことが出来なくなっていた彼女も、少しずつ自分の音を取り戻している。
今はまだコンサートを開くには至っていないものの、いつかの約束通り、小児科病棟にピアノを弾きに行ったこともある。
紺野の家には、水瀬が用意した防音室が出来ていたり、同じく彼が用意したグランドピアノがあったりと、ピアノを練習する環境が整えられている。
たまに人前で弾いたりもするが、それはまだ趣味の範囲だ。
紺野のトレーナーである本村や、後輩の伊吹。よく様子を見に来る水瀬も、彼女のピアノを聴きにきた。
特に水瀬は、仕事でイラついている時に来ているので、頻度は一番多いかもしれない。
満足しきれない部分も多く感じてはいたが、それ以上にのんびりとした毎日が愛おしく、このままでもいいかとも思う。
だが、そろそろアルバイトにでも出て、刺激が欲しくなってきているのも確かだ。
夜になるまでほとんど一人で過ごす真崎にとって、ずっとピアノと向かい合っているだけではつまらない時もある。
寂しいというものなのかもしれない。
だからと言って紺野に言うことでもないし、自分で選んでここまで来たのだから文句は言わない。
だから、やっぱりアルバイトにでも出るべきなのだと一人で納得して、ピアノの置いてありそうなカフェやバーに聞きまわる。