君と歩いていく道
ピアノをアルバイトにしたいと思ったのは、やはりピアニストとしてのプライドだった。

マスコミにも一時騒がれたりもしたが、今はもう本当に静かになった。
これもすべて水瀬のお陰だと、とても感謝している。
水瀬は、と言うよりも水瀬グループがと言った方が正しいのだが、真崎のデビュー当初からのスポンサーなのだ。
彼のためにも、早く復帰したいと思っている。

今は、何も言ってこない両親が一番怖かった。

何軒か回った時、ようやく日雇いでピアノを弾かせてくれるカフェがあった。
昔ながらのカフェのようで、マスターは気さくそうな老人だ。

ピアノは少しばかり埃をかぶっていて、調律も必要なようだったが、真崎が自分でできるので問題はないだろう。無理を言って雇ってもらうのに、調律師まで読んでもらう訳にはいかない。

「では、明日の昼に弾いてもらえるかな?それから、これからのことも決めよう。」

そう言ってくれたマスターのために、真崎は精一杯弾こうと決めた。
もちろん、このことは紺野にはまだ話していない。
なんと言われるかぐらい察しがつかないほど子供ではないし、余計な心配をさせてテニスに影響が出てしまってはいけないと思った。
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