君と歩いていく道
紺野の一言に顔を明るくした真崎は、明日の朝一緒に行こうねと笑った。
その笑顔につられて、紺野も表情を和らげる。

人の空気を一瞬で変えてしまう力を持つ彼女の笑顔は、何物にも代えがたいものだ。
紺野はどれだけ癒されているのか分からないほど、真崎の笑顔に依存しているのかも知れない。


洗い物を終えた真崎は、ソファーで本を読んでいる紺野の横に座ってもたれかかった。
珍しいこともあるものだと、黙って受け入れてやる。
彼女は何も言わなかったが、どことなくさびしそうな表情が目を引いた。


「さびしい思いをさせてすまない。」


本を読んでいたはずの紺野に抱き寄せられて、更に一言加わったことで、真崎はとても驚いた。
寂しいとは思ったが、彼に伝えるつもりは毛頭ない。


「大丈夫だよ。ごめんね、何も出来なくて。心配ばっかり掛けて。」

「いや、俺のほうこそ、お前に何もしてやれない。」

「光博が隣にいてくれることが、一番嬉しいよ。」


真崎が笑うと、言葉を失ってしまう。
彼女の笑顔には圧倒される時さえあり、そんな時は何も言わせてもらえなくなるのだ。

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