君と歩いていく道

人前

そわそわと落ち着きがない紺野を見たのは、久しぶりだと本村は思った。
それが何故かも知っていたが、こんなに動揺するとは思ってもいなかった。新しい発見だと、内心笑ってしまったのは誰にも言えない。


「そんなに気になるなら、行けばいいのに。」


伊吹の言葉も、今の紺野には届かない。
彼は真崎への心配さえ忘れようと、今躍起になって練習に打ち込んでいるのだ。


「なんだか、紺野がとても可愛く見えてしまうな。」


笑った本村が少々不気味ではあったが、伊吹も驚いているぐらいに、今の紺野は意外な姿なのだ。

真崎がアルバイトを始めると言い出したと紺野から聞いた時は、本当に驚いた。
誰しも彼女が内向的な事を疑わなかったし、実際そうなのだ。
だが、ただの内向的な性格だけなら良かったが、彼女は決めたら即行動に移す。だから周りを心配させる。


「なあ、伊吹。」

「なんスか?」

「午前の練習はここまでにして、たまにはカフェでランチと行こうじゃないか。」


本村の眼鏡が怪しく光った気がした。
伊吹にとっても悪い誘いではなく、二つ返事でOKした。


「もちろん、紺野先輩もッスよね。」

「もちろんだ。」


二人は動揺する紺野をひっぱって、無理やり真崎のアルバイト先であるカフェへと向かっていった。
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