君と歩いていく道
驚くことに、真崎の選んだ曲は月光第二楽章。
月光だが、この楽章は昼に聴いても確かに悪くはない。
しかし、彼女の選曲にしては大人し過ぎる気もする。
手首が硬いと認める真崎の弱点は、ピアニシモがうまく弾けないことだ。
柔らかい音を出すのが苦手で、優しい曲調の音楽も苦手。
最も得意とするのはベートーヴェンの悲愴第三楽章。
何より、好きなのだと話していた。
真崎の解釈は悲しいものが多かったし、コンサートでの選曲も偏っていることが多かった。
それでも昼間のカフェで聞かせる曲をと選んだのだろう。評判は上々で、二曲目に入る。
二曲目は、リストのラ・カンパネッラ。
やはり得意分野のト短調は素晴らしく、聴いているものをどんどん引き込んでいく。この様子だと、コンサート復帰は早いかもしれないと、水瀬は内心感じていた。
彼女の弾く曲は何故かいつも悲しい気持ちにさせる。
苦手なショパンの別れの曲など、何かを静かに失ったような気持ちにさせて、涙を流す者は少なくないと、以前音楽雑誌にも書かれていた。
小さなカフェに集まった客は立ちあがって拍手をして、マスターも驚いたように真崎を迎え入れている。
いつの間にかできた人ごみの中にも紺野の姿をしっかりと認め、真崎は大きく手を振る。
それを見届けたのち、四人はそれぞれの場所へと戻っていった。
月光だが、この楽章は昼に聴いても確かに悪くはない。
しかし、彼女の選曲にしては大人し過ぎる気もする。
手首が硬いと認める真崎の弱点は、ピアニシモがうまく弾けないことだ。
柔らかい音を出すのが苦手で、優しい曲調の音楽も苦手。
最も得意とするのはベートーヴェンの悲愴第三楽章。
何より、好きなのだと話していた。
真崎の解釈は悲しいものが多かったし、コンサートでの選曲も偏っていることが多かった。
それでも昼間のカフェで聞かせる曲をと選んだのだろう。評判は上々で、二曲目に入る。
二曲目は、リストのラ・カンパネッラ。
やはり得意分野のト短調は素晴らしく、聴いているものをどんどん引き込んでいく。この様子だと、コンサート復帰は早いかもしれないと、水瀬は内心感じていた。
彼女の弾く曲は何故かいつも悲しい気持ちにさせる。
苦手なショパンの別れの曲など、何かを静かに失ったような気持ちにさせて、涙を流す者は少なくないと、以前音楽雑誌にも書かれていた。
小さなカフェに集まった客は立ちあがって拍手をして、マスターも驚いたように真崎を迎え入れている。
いつの間にかできた人ごみの中にも紺野の姿をしっかりと認め、真崎は大きく手を振る。
それを見届けたのち、四人はそれぞれの場所へと戻っていった。