君と歩いていく道
明日も来てくれと言われた真崎は、とても嬉しかった。
あんなにたくさんの人前で弾いたのは本当に久しぶりだったし、昼間弾くことも少なかったから選曲にとても迷ったのだ。


「今帰った。」

「おかえりなさい。」


いつもとは違う笑顔の種類は、紺野を少しだけ動揺させたようで、足早に彼をバスルームに向かわせてしまった。

真崎はやはり悪いことをしたのかと不安になったが、明日のバイトを断ることも出来ない。
とりあえず夕食の支度をはじめなければと、キッチンに立ったものの疑問は晴れなかった。
聞くのは憚られるし、悩んでいたら味噌汁が吹いてしまった。

別に彼女が悪いわけではない。

紺野は外に出た真崎の変化をよく思ったし、水瀬も問題ないと言っていた。
気になるのはマスコミで、あまり長くあのカフェにいて目立ってしまえば、嗅ぎ付けてくるのは時間の問題だ。
真崎の様子だと明日も来てくれと言われたのだろう。

きちんと話しておかなければいけないと思い、紺野は短いシャワーを終えた。


< 60 / 99 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop