君と歩いていく道

「走らなくても良い。」

転びそうだと心配になって眉をひそめた紺野に、真崎は笑ってごまかす。

早く会いたかったのだと素直に言うことも出来なくて、甘えるように手をつなぐことも出来ない。周りから見ればもどかしい二人だが、これでももう付き合い始めてから一年半以上経っている。

人に触れることに慣れていない二人の距離は、触れようと思えば触れられるぐらい。
それなのに人前では決してそういったそぶりは見せない。
だが、二人の間に流れる空気はとても穏やかで、誰かが入り込む隙などないのだ。

仏頂面で有名な紺野の表情が緩むのは真崎の前だけだと、本村が感心するほどに。
もどかしくも微笑ましい関係に、誰もが二人を応援していた。

「リクエストは?って、そんなにレパートリー無いけど。」

日本にいたころはすべて家政婦にやってもらっていたせいで、真崎が料理をし始めたのはアメリカで紺野と暮らすようになってからだ。

「味噌汁の具に、大根が欲しいところだが・・・。」

「見かけないねぇ。」

「だろうな。」

とりあえず、彼のリクエストは出来ない。
このままアメリカに住むのなら、庭で育てたいぐらいだと思いながら、真崎は手早くカートに野菜を入れていく。
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