君と歩いていく道
水瀬はそんな意図をくみ取って、鼻で笑う。


「ごまかしてんじゃねえ。ちゃんと答えろ。」

「ごめん。」


真崎の表情は暗い。
泣き出しそうな、しかしどこか諦めたような雰囲気さえ漂う。


「ねえ、このまま光博と一緒にいられるのかなぁ・・・。」


幼馴染にだけ打ち明ける胸の内を、吐き出せば少しすっきりした。

「バーカ。何弱気になってやがる。」
「ごめん。忘れて。」
「忘れるかよ。」

水瀬に軽く頭を殴られ、大げさに抑えればまた鼻で笑われる。


「とにかく、心だけは気ぃ張っとけ。・・・お前には手強い相手が来る。」


彼のその言葉だけで、真崎の背中に冷たい汗が流れた。
そして乾いた笑いだけが口からこぼれて、その場に立ち尽くしてしまう。

「嫌な予感、当たったかも。」
「紺野には俺から言っといてやる。もっとも、奴に頼まれてたんだがな。」
「光博に?」
「他に誰がいる。」

紺野には心配をかけっぱなしだと少し哀しくなりながら、真崎はすべてを見通していた幼馴染に、悔し紛れにビールをワンケース持たせた。
彼は整った眉を少ししかめただけで、何も言わずに持って出て行く。
その背中に〝ありがとう〟と小さく呟いて、真崎はキッチンでたまった食器を洗いだした。

真崎が気持ちを落ち着ける為、少しの間でも独りになりたかったことを水瀬は分かっているから、何も言わなかった。
水瀬の心づかいも真崎は理解していたし、感謝もしている。
何もかも彼に頼りっぱなしなのは、今に始まったことではない。
昔も今も、家族以上によりかかれる存在だ。
それでも、これから起こることを考えると、やはり彼に頼るしかなくなってくるのが心苦しい。

マスコミやパパラッチなどではなかった、フラッシュの正体。

水瀬の言葉から、それは真崎にとって手強過ぎる相手である、自分の母親の差し金だと察した。
紺野を自分の家の問題に巻き込むことはとても嫌だったが、来てしまったものは仕方がない。

腹を括って、対峙しなければ。

せめて、彼に迷惑がかからないように。

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