君と歩いていく道
どれだけ交わしても少しも官能的にならないそれは、ただ彼女の心の奥底の寂しさを強く伝えてくる。
ゆっくりと離れていく唇を追いかけて、もう一度キス。
抱きしめた体は相変わらず細かったが、以前程の病的な細さではない。
いつの間にかはなれた唇。
ゆっくりと力が抜けた体。
規則正しく聞こえる寝息。
今日は忙しかったので、疲れたのだろう。
日々鍛えている紺野とは違い、半ば引きこもっていた真崎には、人前に出るだけでも疲労の原因になるに違いない。
ソファーに来たときと同じように抱きかかえ、そっとベッドルームへと運ぶ。
幼い子供のように布団を掛けてやりながら、疲れきった寝顔を見て、水瀬に聞いたことを思い返してみた。
残念ながら、あまり気持ちの良い話ではない。
今まであまり語りたがらなかった、彼女の家族の話だ。
今回のトラブルの原因も、そこに起因しているのだと水瀬は言っていた。
よく、音楽情報誌で見かける、真崎の両親。
父親は世界的に有名な指揮者。
母親は旧家の令嬢で、音楽評論家らしい。
自分の批判しかしないからと、本人は手にも取らない。
一度だけ目にした記事は、まさにその通りだった。
娘の事についての質問では、ピアニストとしての未熟さ、音楽への姿勢などが、辛辣に書き綴られていて、読んでいるこちらが苦しくなるほどだった。
自殺未遂をした娘に対しての、親の言葉ではない。
紺野はそう感じた。
そこまで批判するのなら縁を切ればいいものを、アメリカ移住から一年以上経って、何故、今影をちらつかせるのか。
ゆっくりと離れていく唇を追いかけて、もう一度キス。
抱きしめた体は相変わらず細かったが、以前程の病的な細さではない。
いつの間にかはなれた唇。
ゆっくりと力が抜けた体。
規則正しく聞こえる寝息。
今日は忙しかったので、疲れたのだろう。
日々鍛えている紺野とは違い、半ば引きこもっていた真崎には、人前に出るだけでも疲労の原因になるに違いない。
ソファーに来たときと同じように抱きかかえ、そっとベッドルームへと運ぶ。
幼い子供のように布団を掛けてやりながら、疲れきった寝顔を見て、水瀬に聞いたことを思い返してみた。
残念ながら、あまり気持ちの良い話ではない。
今まであまり語りたがらなかった、彼女の家族の話だ。
今回のトラブルの原因も、そこに起因しているのだと水瀬は言っていた。
よく、音楽情報誌で見かける、真崎の両親。
父親は世界的に有名な指揮者。
母親は旧家の令嬢で、音楽評論家らしい。
自分の批判しかしないからと、本人は手にも取らない。
一度だけ目にした記事は、まさにその通りだった。
娘の事についての質問では、ピアニストとしての未熟さ、音楽への姿勢などが、辛辣に書き綴られていて、読んでいるこちらが苦しくなるほどだった。
自殺未遂をした娘に対しての、親の言葉ではない。
紺野はそう感じた。
そこまで批判するのなら縁を切ればいいものを、アメリカ移住から一年以上経って、何故、今影をちらつかせるのか。