君と歩いていく道

不通

久しぶりに早く帰れた紺野が家の前までたどり着いたのは、陽が傾き始めて間もない時刻。

前の道路には見慣れない黒いリムジンが停まっていたが、きっと水瀬が来ているのだろうとあまり気にしなかった。

水瀬から真崎の両親のことを聞いてはいたが、あれから一週間、本当に何も無かったのだ。
油断は禁物だと思ったが、彼女の親を知らない紺野にとってはあまり真実味のない話でもあった。

だから、気にしなかったのも無理はないのかもしれない。

特に今週は毎日練習で忙しく、帰るのもとても遅かった。
独りにしておくのが心配だからと水瀬もよく来ていたし、リムジンのことも、彼がたまたま車を変えたのだろうとしか思わなかった。
もうすぐ大会があるので、オーストラリアに行かなければいけない。
そのことを真崎も分かっていたので、彼女は旅行気分で楽しみにしていたというのに。

「私は戻らないと言っているでしょう!!」

ドアを開けた瞬間に聞こえてきた怒鳴り声とテーブルを殴る音に、紺野は少し驚いた。
明らかに真崎の声なのだが、彼女がこんなに感情を荒げることはほとんどないのだ。
言葉遣いも、普段とは違って気になる。

「玲、何かあったのか。」

「みつ、ひろ・・・。」

がく然とした表情の前には、見慣れない和装の女性が座っている。

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