君と歩いていく道
だがすぐに手はつかまれてしまうし、母の握力はとても強くて簡単には解かせてもらえない。

「彼女を連れていく理由を教えてください。私にも関係があることです。」

「・・・光博・・・。」

関係があることなのは、当然だ。
真崎をここまで連れて来て半ば強制的に住まわせたのは自分なのだから。

その彼女がここにいたいと言うのなら、ずっとここにいたってかまわないのだ。
こんな形でなんて、誰も望んでいない。

一瞥されてもひるまない紺野に少し感心した真崎の母は、意地の悪い笑みを浮かべて紺野に封筒を差し出した。
とても分厚い封筒を押しつけられ、それは受け取らなかった紺野の足もとに落ちる。

「では、ありきたりかもしれないけれど、これで縁を切っていただけるかしら。」

分厚い封筒の中身は、見なくてもわかる。

「お母様!やめてください!!」

「受け取ることは、出来ません。」

拾って突き返せば、受け取らない母の代りに真崎が受け取ってくれた。
突き返された一瞬だけ力の緩んだ隙を逃さず、真崎は母に向きなおって封筒を突き出す。
母親はしぶしぶそれを受け取り、あきれた顔を隠さずにため息を吐いた。

「玲さん、いい加減にしなさい。紺野さんのご迷惑になるでしょう。」

「だったら、お母様が出て行けばいいでしょう。もう私のことは放っておいてください。」

紺野の言葉や真摯な表情に幾分か落ち着きを取り戻した真崎は、よほど気を張っているのか、薄い肩が上下している。
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